錠前というのは個人にしろ組織にしろ、財産を守るために使われるものです。古代でもその目的は変わりません。なんと、紀元前からカギのような考え方はあったそうです。エジプトの王様は財産の入った箱を紐でくくって括目に粘土や蝋を塗りこめておいて王の印を押しました。もしその結び目が解かれていたら誰かが解いたということがわかるわけです。その印を所有しているものだけが箱を開けることができるようになっていたのです。これは錠前と同じ仕組みですね。
その後、独立した錠前が発明されます。宝箱や蔵のカギにかけて使われるようになったそうです。
日本においては弥生時代ころに豪族という力のある人が財産をもちはじめて、カギが必要になったと考えられています。蔵には防犯のためにとても丈夫な海老錠というものが使われていました。
宝箱のカギは小型で金銀鍍金の、象嵌入りのものなどがありました。防犯だけではなく、そのきらびやかさから富の象徴にもなっていたのです。国司の交代の儀式の時には印鑑と同時にカギの引き渡しが執り行われました。
それから神社やお寺が作られるようになり、そこに収められる宝蔵や経蔵などを守るためにもカギは生まれます。しかし、庶民は一方で守る財産など持っていなかったので戸口にカギを掛ける必要はありませんでした。家を留守にするときはご近所に声をかけておくだけで防犯になったそうです。
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